• No.4872
  • 料理・グルメ

すんき漬け (長野県/木曽地方)

長野県木曽地方に伝わる伝統的な発酵食品である。カブナの漬物の一種であるが、無塩乳酸発酵を行うことに特徴がある。

独特な酸味としゃきしゃきした食感を持つ食品として食べられる。塩分を含まないので、適当な長さに切り、削った鰹節と醤油をかけて、米飯と共に食すほか、茶請けとして、喫茶の際にも食べる。また、日常料理の素材としても用いられ、さまざまな形で食卓に上る。

地元で主にすんき菜と呼ばれるカブナを材料とした、在来の漬け菜の一種である。
一般には、日干しにて保存しておいた前年のすんき漬を種として加えて乳酸菌を接種、発酵させることで作る。一般的な漬物は食塩を用いて腐敗菌、食中毒菌などの雑菌の繁殖を抑制するとともに、食塩水の高い浸透圧で野菜の細胞から細胞液を引き出し、その中に野菜が沈んだ嫌気状態で乳酸発酵させてpHを下げ、さらに雑菌の抑制を行う。しかし、木曽地方は海から遠い山国であることもあり、「米は貸しても塩は貸せるな」という言葉が存在するくらい塩は貴重な財産だった。そのため、野菜の保存に食塩をふんだんに使うことは困難であり、無塩発酵の漬物が生じることになったと考えられている。木曽地方の中でも、旧開田村や王滝村のような高冷地でないと、茎が柔らかくなってしまうなど、味や食感のよいすんき漬けはできないとされる。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sunki_zuke_nagano.html)

山深い木曽地域は古くから独自の食文化が根付いており、そのひとつに赤かぶの葉を使った「すんき漬け」がある。すんき漬けとは赤かぶの葉を塩を一切使わずに「すんき種」を加えて乳酸発酵させた無塩の漬物のことで、木曽地域に古くから伝わる発酵食品で「すんき」ともいう。
まだ流通や交通がなかった時代は、「米は貸しても塩は貸すな」といわれたほど、海から遠く離れ山深い木曽谷では塩は大変貴重品だった。塩を節約するために、生活の知恵から生まれたこのすんき漬けは、独特の酸味があり、一般的な漬物とは異なる味わいを持つ。歴史は定かではないが、芭蕉一門の連句会で「木曽の酸茎(すんき)に春も暮れつつ」と詠んでいることや、約150年前の古文書にもすんき料理が出されたと記されていることから、少なくとも300年以上前にはあったといわれている。原料となる赤かぶは木曽地域で古くから栽培されてきた「木曽かぶ」を用いる。木曽かぶには「開田かぶ」「王滝かぶ」「三岳黒瀬かぶ」「吉野かぶ」「芦島かぶ」「細島かぶ」と地元に根付いた6種類のかぶがある。かぶが持つ自然の乳酸菌は、特に茎と根の付け根の部分に多く含まれているといわれている。また、かぶが持つ乳酸菌の微妙な違いなのか風土の違いか、他所ですんきを漬けても同じようにはならないという。昔は、山に自生する小梨(ズミ)や山葡萄などの実をたたいてつぶし、発酵させたものを「すんき種」として用いた。今では、前の年に漬けたすんき漬けを干しておいたり、冷凍したりものを「すんき種」として用いている。最近の研究では、すんきにはヨーグルトに匹敵するほどの乳酸菌があるといわれ、300種類以上もある乳酸菌の中からすんき漬けに向くものが4種類ほどあることが分かっている。平成15年からすんき乳酸菌の本格的な研究が東京農業大学教授によりおこなわれ、その4種類の乳酸菌を使ったすんき種(スターター)の試作テストが進められている。

2015/1/14 11:54:57 登録 2024/4/19 13:45:24 更新

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